本論は2009年12月に人文社会系系研究科に提出された修士論文に基づき加筆修正を加えたものである。後半となる本論では(1)に引き続きシュテファン・ツヴァイクの『エレミヤ』とそこに表現された「敗北主義」を扱う。第一次世界大戦中にツヴァイクはロマン・ロランと深い交流を持つが、『エレミヤ』及びそれに続くツヴァイクの「敗北主義」をめぐる議論を通して両者の立場の微妙な違いが明らかになる。彼は平和理念こそ闘争の原理を否定すべきで、理念のために他者の犠牲を要求することは許されないと論じて自らを「敗北主義者」と称するが、ロランはこれに反対した。ツヴァイクの描く、敗者によって平和理念が体現されるという構図は、自由理念にも当てはまる。自由理念には「勝者」とならないこと、すなわちいかなる形でも自由の抑圧者とならないことが要求される。このことと、平和及び自由のための現実的行動の必要性とのジレンマがツヴァイクの中には終始存在していた
論説 / Articleグリム童話では、恋愛結婚の話の数は他の結婚の話を圧倒し断然第1位である。『日本の昔ばなし』にはそれと比べうる恋愛結婚の話は一つしかない。グリム童話では、恋する女性の多くは自立し...
18世紀の教育家クリスティアン・ゴットヒルフ・ザルツマンの『かにの本』にはイソップに想を得たといわれる扉絵とモットーが添えられている。しかし、実際にオリジナルと対比してみると、そこにはふたつの変更を認...
本稿は、ドイツ売買法における追完の履行場所に関する問題を検討するものである。売買契約において売主が瑕疵ある物を提供した場合、買主は追完請求権を有するが、このとき売主の追完義務の履行場所はどこかが問題と...
本論は2009年12月に人文社会系系研究科に提出された修士論文に基づき加筆修正を加えたものである。シュテファン・ツヴァイクの劇詩『エレミヤ』は第一次世界大戦中に執筆され、1918年にチューリヒで初演さ...
シュテファン・ツヴァイクの小説『埋められた燭台』(1937)は亡命下で書かれたユダヤ伝説である。史実ではローマからコンスタンティノープルに運ばれた後消滅したユダヤ教の聖なる燭台が、ツヴァイクの物語では...
本論はシュテファン・ツヴァイクの伝記『ロッテルダムのエラスムスの勝利と悲劇』を、出版当時の1930年代の政治情勢とそれに対する著者及び周囲の人物の態度に着目して扱う。この作品ではエラスムスと対立するル...
遺言書の破棄による遺言の全部あるいは一部の撤回と遺言書の加除その他の変更に厳格な方式が要求されることとの間には、遺言者の真意の尊重と方式主義の要請の緊張関係があり、学説上も両者の振り分けについて争いが...
この論文は、ドイツ啓蒙主義固有の性格について主にフランス啓蒙主義との対比において考察したものである。18世紀の初め、ドイツ啓蒙主義の展開はベルリンにおいて最も進んでいた。この発展に寄与したのが、フリー...
地震の統計的研究の断片である。1996-1925の間に起つた太平洋附近の海底地震の中、理科年表の激震の表に記載されてゐるものを拾ひ出して之を統計的に取扱つた。震源の位置を示すのに、φ及びλによらず、λ...
クルト・シュヴィッタースの1926年頃までの散文作品には、言語という表現素材に立ち向かうシュヴィッタースの実験的精神が顕著に表れている。その言語実験は二つの方向性を取っている。1920年頃までの初期作...
本稿は、KHM150番のメルヘン「年寄りの乞食女」の受容をめぐるノートである。18世紀の小説中から抜き出されて、グリム兄弟によって『子どもと家庭のメルヘン集』に収録されて以来、この1ページたらずの小篇...
シュテファン・ツヴァイクの遺作となった回想録『昨日の世界』は1942年に出版された。ハンナ・アーレントは1943年に英語版に対する書評を発表し、後に『昨日の世界のユダヤ人』と題してエッセイ集『隠された...
ベンヤミンとヘッセルにとって二つの首都、パリとベルリンは生活のうえでも、作品のうえでも、決定的に重要な都市であった。ベンヤミンは未完の『パサージュ論』でパリととりくんだ。この作品は成立史的にみても、形...
本論では,死を世界体験の限界と捉え,死にどのような視覚イメージが与えられているのか,また,死がどのように言語化されているのかを考察する。Ⅰでは,18世紀後半の死をめぐるイメージ転換との関連で,ジャン・...
ホフマンスタールの死後にR. シュトラウスはシュテファン・ツヴァイクのリブレットによるオペラ『無口な女』を完成させたが、ナチス政権によりその後の共作は妨げられることになる。本論ではヴァーグナー以後のオ...
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シュテファン・ツヴァイクの遺作となった回想録『昨日の世界』は1942年に出版された。ハンナ・アーレントは1943年に英語版に対する書評を発表し、後に『昨日の世界のユダヤ人』と題してエッセイ集『隠された...
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本稿は、ドイツ売買法における追完の履行場所に関する問題を検討するものである。売買契約において売主が瑕疵ある物を提供した場合、買主は追完請求権を有するが、このとき売主の追完義務の履行場所はどこかが問題と...